2015年3月16日 星期一

日語短文:お金とピストル

お金とピストル  夢野久作

 泥棒(どろぼう)がケチンボの(いえ)(はい)ってピストルを()せて、お(かね)()せと()いました。ケチンボは、
「ただお(かね)()すのはいやだ。その短銃(ピストル)()ってくれるなら千円(せんえん)()おう。お(まえ)(わたし)からお(かね)さえ(もら)えばそんなピストルは()らないだろう」
 泥棒(どろぼう)(かんが)えておりましたが、とうとうそのピストルを千円(せんえん)でケチンボに()りました。ケチンボは泥棒(どろぼう)からピストルを()()ると、すぐにも泥棒(どろぼう)()ちそうにしながら、
「さあ、そのお(かね)ばかりでない、ほかで(ぬす)んだお(かね)もみんな()せ。()さないと(ころ)してしまうぞ」
 と怒鳴(どな)りました。
 泥棒(どろぼう)(はら)(かか)えて(わら)いました。
「アハハ。そのピストルはオモチャのピストルで、()っても弾丸(たま)()ないのだよ」
 と()ううちに(おもて)()()しました。ケチンボはピストルを()()して泥棒(どろぼう)()っかけて、往来(おうらい)()()()いを(はじ)めましたが、やがて(とお)りかかったおまわりさんが二人(ふたり)を押えて警察(けいさつ)()れて行きました。
 警察(けいさつ)でいろいろ調(しら)べてみますと、泥棒(どろぼう)(もら)った千円(せんえん)のお(かね)はみんな贋物(にせもの)のお(かね)で、ピストルはやっぱり本物(ほんもの)のピストルでした。
 二人(ふたり)(とも)(ろう)()()れられました。



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